「ポイント10倍」と「10%OFF」。あなたのお店はどっち?

実店舗やネットショップで、よく見かける「ポイント」と「割引」。
ポイントはお買い上げ100円につき、1ポイント還元するケースが多いですね。

そのため「ポイント10倍」と「10%OFF」は、お店(事業者)としては「どちらも同じ1割引」と思いがち。
ところが、このように錯覚したままだと、なかなか手痛い思いをしてしまうかも知れませんよ…!

先日、「身近なアレを数学で説明してみる(佐々木淳著)SBクリエイティブ」という本を読んで触発されたので、同書を参考にさせていただきつつ「ポイント還元と値引きはどう違うのか?」考えてみます。

例として「単価10,000円の商品が1個売れる場合」を見てみます。
* 理解を容易にするため消費税は考えないことにします。
結果は次のとおりです。

ポイント 販売額+還元 割引率
1 通常(1%) 10,100円 100÷10100= 0.99%
2 10倍(10%) 11,000円 1000÷11000= 9.09%
3 20倍(20%) 12,000円 2000÷12000=16.67%
4 25倍(25%) 12,500円 2500÷12500=20.00%
5 50倍(50%) 15,000円 5000÷15000=33.33%
6 100倍(100%) 20,000円 10000÷20000=50.00%

表の見方です。
まず1行目。通常(ポイント還元率1%)の場合、販売額10,000円に100ポイント(100円相当)付与します。

ポイント 販売額+還元 割引率
1 通常(1%) 10,100円 100÷10100= 0.99%

お客様は10,100円分の商品を、10,000円で入手できることになります。
割引率を計算すると次のとおりです。

割引率(値引き率) 割引100円 ÷ 本来の売価10,100円 = 0.99%

つまり「ポイント1%付与」は「0.99%オフ」と同じこと。
この数字なら、お店にとっては「ポイントと値引きはどちらも差はない」と考えられますね。

ポイント 販売額+還元 割引率
2 10倍(10%) 11,000円 1000÷11000= 9.09%

2行目はポイント10倍の場合です。
割引率を見ると「ポイント10%は、9.09%OFFと等しい」ことがわかります。
10%と9.09%は、1%ほど違うものの、まだ大した差ではありません。

ポイント 販売額+還元 割引率
4 25倍(25%) 12,500円 2500÷12500=20.00%

4行目の「ポイント25倍」はどうでしょうか。
なんと、「20%OFF」と同じです。
つまりポイント25%還元は、実は2割引(20%OFF)のことを言ってるわけです。
どちらも店の負担は同じなのに、お客様から見ると、不思議なことにポイントで表現する方が「断然お得感が高い!」ように見えませんか?

もう、おわかりですね。
この錯覚はポイント還元率の増加にともなって大きくなっていきます。
お店の負担が同じである時、値引きよりもポイント還元で表現する方が、見た目の数字は大きくなるのです。

ポイント 販売額+還元 割引率
5 50倍(50%) 15,000円 5000÷15000=33.33%

5行目の「33%OFF」だと、まぁセールなら普通かな、と受けとめられる数字ですよね。
けれども「ポイント50倍」なんて言われたら、「お店の経営、大丈夫?」と客の立場でもびっくりしてしまいます。
やってるのは同じことなんですけどね。
1倍というのは百分率で表現すると100%のことなので、「倍」という言葉自体が「%」より100倍パワーがあるように錯覚してしまう面もあります。(ポイントって「倍」で表現できるから、ずるいですよね)

また、ポイントの場合、「次回購入につながりやすい」のも特長です。
購入で得たポイントは、もう一度あなたのお店で何かを買うまで得をしたことになりません。
これは次回来店の動機になりますし、もし来店されなかった場合は、有効期限とともにポイントは消失します。
消失すると、ポイントを通じて還元する予定だった値引きはゼロ。定価で販売したのと同じになるわけです。
つまりお店(事業者)にとっては、いずれの場合でも、値引きよりポイント還元の方が見た目の数字にインパクトがあり、そのうえ利益も確保しやすいわけです。

どおりで街の量販店やドラッグストア、楽天等が「ポイント○倍」を盛大にやっているわけですね。
今後の貴店のご参考になれば幸いです。

* Tポイント等の共通ポイントでは、自店で再購入しない場合でもポイント負担は必要になる等、ルールが異なる場合があります